石楠花登山教室「山へ行こう」


1.山の装備 2.食料と衣類 3. 山での行動 4.危機管理とチームワーク





4. 危機管理とチームワーク


応急処置等については、機会があれば赤十字などの講習を受けるとして、今回は省きます。

まず、山に出かけることを決める前に下記の質問に自分自身の答えを出してみてください。


・ 装備に過不足はありませんか? (→「山の装備」へ)
・ 非常食、水、常備薬は別に用意していますか? (→「山の装備」 「食料と衣類」へ)
・ 服装、靴は適切に選べましたか? (→「食料と衣類」へ)
・ 心身ともに健康管理は十分ですか? (→「山での行動」へ)
・ 山行中の自己管理をきちんとできますか? (→「山での行動」へ)
・ 自分でルートを地図やガイドで確認しましたか?
・ ルートのレベルを把握していますか?
・ 不安な個所をリーダーに相談しましたか?
・ 参加する山行のメンバーが分かっていますか?
・ 安心して行動を共にできるpartyですか?
・ 今回のリーダーは現地情報をきちんと把握していますか?


Partyを組むということ


◇ 最大のメリットは緊急時の対応がしやすいこと。例えば誰かが動けなくなった場合、まず安全な場所にその人を移動させる。二人がかりで運ぶ事が多い。その後一人はその人の介護に当たり、もう一人は伝令役として山小屋または医者や警察に連絡の取れる所まで走ることになる。これを考えるとPartyは3人以上で構成することが望ましい。


◇ もうひとつのメリットはテント、炊事用具などの装備負担が分散されること(共同装備)


一人ではできないことがPartyを組めばできる。集団で行動するので不安が軽減される。それこそ最大のメリットではないか、と考える人もいるだろう。残念ながらこれらには“裏”があり、一人ならできることもPartyを組むとできなくなる、集団行動でかえって不安が増大するということもあり得る。結局裏が出るか、表が出るかは Partyやそのチームワークの質による。そこでこのことについてもう少し考えてみることにする。


◇ Partyを一つのチームとすると、チーム最大公約数=結果。 理想は粒ぞろいなことだが、現実にはおのおのの得意分野を出し合ってお互いの弱点を補い合う(=最大公約数を上げる)。登りが得意な人、下りが得意な人、歩みは遅いが持久力のある人、荷物をたくさん持てる人、歩みは速いがすぐばてる人、体力は無いがよく気配りできる人、知識の豊富な人、小道具に工夫が効いている人等々色んな人がいる。よい山行にするにはそれぞれの能力をどのようにうまく使うか、また無理をせず、どのように不足を補い合うかが重要になる。だから、謙虚にも山に「連れて行ってもらっている」なんて思わないで欲しい。そういう意味ではそれぞれが「チーム」の一員なのだから。(もちろんリーダーも油断してはならない)


◇ チームの仲間としての信頼は、気が合うとか、仲良し同士で無ければならないということではなく、お互いきちんと自己主張できるか、仲間を気遣い行動できるかということである。自分の体調に変化のあった場合でも、遠慮せず訴えることができる(*1)なら、安心度は大きい。また仲間の気配りは気力(→体力)回復に役立つ。逆に意志の疎通に不安を感じる場合は危険。精神的不安、不快感などのため適切な判断ができなくなることはどんな体力、知識の持ち主にとっても致命的である。


*1 前回にも述べたが、無理をすると自分が苦しむだけではすまなくなることがある。誰にも訴えず我慢しながら決行すれば取り返しのつかないことになりかねないので、 症状が軽く、対処できるうちに対策を打たなければならない。まず自分の状態を仲間に伝える。引き返す、休憩を取る、荷物を持ってもらう、その他の処置を相談する。無理して登ることに伴う危険性はそれぞれが認識しなければならない。


リーダーの役目、メンバーの役目


◇ リーダー、サブリーダー、企画者>>実行しようとしている登山の危険の予知と、予知された危険を回避すること。(*2)登山前の情報収集は万全か。天候、地盤、足場の状態、危険生物、水場、ビバーク場所、各種連絡先などの現地情報の確認。エスケープルートの設定。地図で確認したり、山小屋など現地の施設や役場などから情報を得ておくこと。そのうえでその計画はメンバーの能力に見合っているか、無理は無いか判断する。事前に収集した情報は必要に応じてメンバーに報告し、注意を促す。また、危険回避のための対策を立てる。


◇ メンバー>>どのリーダーのどんなPartyのどの山域を選ぶかに始まり、山行中の自己管理まで、原則としてすべて自己責任で山行に参加する。不安、疑問があるときはリーダーやメンバーとよく相談すること。メンバーの一員としての節度を守り、協力する。また必要に応じて保険に入っておくことも忘れないこと。


*2 リーダー(またはサブ)でなくとも読図できる人が先頭を行けばよいが、最後尾にはやはりリーダー(またはサブ)がついたほうがよいと思われる。スイーパーとしての役目をするとともにメンバーの状態をチェックし、休憩を取ったり、隊列順序を変えたり、その他状況に応じて様々な判断をする役目を負っているからである。


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